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ソフトウェア開発を AI エージェントで加速する ── TOPPAN が体験した SDLC 主要フェーズの手応え

2026 年 6 月 12 日、TOPPAN 株式会社の皆さまを対象に、AWS のハンズオンワークショップ Accelerating Smart Product SDLC with AI Agent Workshop を開催しました。本ワークショップは AI エージェント Kiro CLI を使い、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の主要フェーズを AI と協調しながら回す体験型のワークショップです。

生成 AI をソフトウェア開発の中で個別に取り入れる動きは広がってきました。一方で、要件定義からテスト、リリース、運用まで含めた SDLC 全体に AI をどう組み込むかは、多くの開発現場が模索しているテーマです。本ワークショップは、その問いに対して 1 つの具体的な進め方を示すものです。本記事では、TOPPAN 株式会社の皆さまが当日体験した内容と、現場のエンジニアとしてつかんだ手応えを、寄稿いただく形でお届けします。

ワークショップの位置づけ

最初に、本ワークショップについて アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト の三好から少しだけご紹介させていただきます。

スマートプロダクト開発と聞くと、ハードウェア寄りの特殊な世界に見えるかもしれません。しかし本ワークショップが提示するのは、ハード固有の話ではなく、多くのソフトウェア開発に共通する SDLC(Research → Plan → Development → Release → Operation)に AI エージェントをどう組み込むかというテーマです。題材として、ビルや施設の空調機器を制御する HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning:冷暖房・換気・空調)コントロールシステムを用いていますが、そこで得られる学びは、業務システムでも Web アプリケーションでも、SaaS でも応用できます。

特別な開発手法を新たに導入するのではなく、今ある SDLC の各フェーズに AI エージェントを自然に溶け込ませる ── それが本ワークショップの狙いです。

ワークショップは SDLC の各フェーズに対応した複数のラボで構成されており、今回は半日で SDLC の流れを体感できるよう、Lab1(Research)、Lab2(Plan)、Lab4(Release)をピックアップして実施しました。Lab3(Development)と Lab5(Operation)も Workshop Studio のカタログページ で公開されているので、ご興味のある方はそちらでお試しいただけます。

AI エージェントとして使うのは Kiro CLI で、人間が「何を作るか」「どう作るか」を判断し、AI が手を動かす ── この役割分担を徹底する形になっています。

それでは、お待たせしました。ここからは、ワークショップに参加された TOPPAN 株式会社 IoT ソリューション事業部 ICT 本部の加納・大石の両氏による寄稿です。当日のリアルな手応えを、どうぞお楽しみください!


※※※ 以下、TOPPAN 株式会社 IoT ソリューション事業部 ICT 本部 所属の 加納・大石 両氏による寄稿です。※※※

参加の背景

TOPPAN 株式会社の 加納・大石 です。私たちの部門では、「自社プロダクトの企画・開発」「クライアントワーク」を中心に、ハードとソフトを組み合わせた、IoT ソリューション事業 を展開しています。

加納: 私は、受託事業から自社サービスまで、IoT ソリューションを中心としたさまざまな事業領域 で フルスタックエンジニアとして自社ソリューションや社内システムの設計・開発などを担当しています。バイブコーディングによる開発が浸透する中、開発時に AI へ与えるコンテキストや AI が生成するコンテキストが、各開発者のローカルに閉じてしまう点に課題を感じていました。その結果、開発で用いる AI の思想やアウトプットに開発者間のばらつきが生じ、引き継ぎが難しくなる場面も見てきました。そこで改めて、一人の開発者が AI を活用するフェーズから一歩進み、「チームとして AI を組み込んだ開発プロセスを確立すること」や「AI 開発の再現性」を課題として捉えるようになりました。

大石: 私は、主に自社プロダクトの開発領域 で 生成 AI を組み込んだ Web アプリケーション開発を担当している入社 2 年目のジュニアエンジニアです。近年、生成 AI を開発に取り入れる動きは社内でも広がっています。一方で、実装やテストを除く、要件定義や設計、運用といった他フェーズでの本格的な活用には十分に踏み込めていませんでした。入社して 1 年は、ひたすらコーディングで AI を使ってきましたが、2 年目になり最近では、「仕様駆動開発」の手法を取り入れ始め、AI エージェントをコーディング以外の開発プロセスへどのように組み込めるか考える機会が多くなりました。

こうした課題を抱える中で、AWS から本ワークショップの案内をいただきました。SDLC 全体に AI を組み込むという発想は、まさに私たちが模索していたテーマでした。AI との真の協調へとどう移行するか、その実感を得たいという思いで参加しました。

ワークショップの全体像

参加メンバーは 20 名、開発エンジニアとプロジェクトマネジメントをメイン業務とするメンバーを中心に構成され、各自が手元の Kiro CLI を操作しながら進めました。参加者をエンジニアに限定しない点には、こだわりがありました。プロジェクトを牽引しマネジメントする立場のメンバーにも、生成 AI を組み込んだ開発プロセスの概念理解に加え、マネジメント手法も併せてアップデートする必要があると考えたためです。

今回のワークショップの題材となる HVAC コントロールシステムは、温度センサーやアクチュエーターを持つ典型的な組み込みシステムですが、その内側にあるのは「要件があり、設計があり、実装・テスト・リリース・運用がある」という、ごく一般的なソフトウェア開発の構造です。だからこそ、ここで得られる体験は、私たちが普段手がけている開発にも素直に持ち帰れると感じました。

当日の体験:実施したラボの振り返り

Lab1: Research ── レガシーコードを AI に読ませ、HTML モックで新 UI を高速試作

大石: 私は、最近になって AI を活用した開発の難しさを感じていました。プロンプトだけでは自分が想像しているものと AI が解釈したものにギャップが生じることが多く、実装後に画面を見てから「思ったのと違う」と気づき、そこからまた修正するというやり取りが発生していました。Lab1 では、実装に入る前に AI が HTML で画面イメージをサクッと作成し、認識をすり合わせながら実装に進める手法を体験し、これまで課題に感じていた実装後の手戻りを減らせると思いました。

レガシーコードの画面 AI を使って検討した画面

大石: AI 駆動開発に馴染みのないメンバーでも、開発における AI 活用の基本概念を学べました。さらにハンズオン形式だったことで、人間が思考しながら AI に実行させる、まさに AI 駆動開発のプロセスを実践的に体験できました。

Lab2: Plan ── 既存コードから設計書をリバースエンジニアリングし、次世代仕様へ

加納: GitLab での Issue 管理自体を Kiro に実施させることによって、人間側は要件の精緻化などに時間をかけることができ、かつ開発コンテキストを継続的に管理できると学びました。

加納: 生成 AI が登場した当初は、AI を活用した開発は新規プロジェクトと相性が良いイメージを受けた一方で、既存プロジェクトへの導入にはまだ課題が多いと感じていました。しかし今回の Lab2 を通じて、AI 駆動開発の進化に驚きました。特に現状システムの実態と、仕様変更や改修の積み重ねによって、システムの実態と設計書をはじめとしたドキュメント類の間にはギャップが生じやすい点を踏まえると、リバースエンジニアリングという視点はシステムとの整合性を高められ、実務でも効果的に活用できる可能性を感じました。

Lab4: Release ── AWS MCP Server を活用し、AI と CI/CD パイプラインを構築

大石: AWS CodeBuild や AWS CodePipeline に触れたことがなかったため、AWS の CI/CD のサービスを実際に扱えたのがまず良かったです。さらに、MCP と AI を活用して CI/CD パイプラインをスピーディーに構築できる点が非常に興味深かったです。

加納: 日々進化している AWS サービスに追従して CI/CD を構築するには、相応の知識が必要でした。ですが AWS MCP Server を使うことで、最新情報を AI に参照させながら進められ、手戻りを大幅に減らせると実感しました。さらに、エラーが出ても AI が内容を参照して修正できるため、設定完了までほぼ自律的に動作させることができました。

加納: Lab4 の体験は、私たちがいま課題としている「チームにおける AI を活用した開発手法の確立」に向けて、大きなヒントになりました。設計の背景や意思決定の理由を Issue に記録しながら進めることで、チームとして AI を活用した開発をどのように運用するかのイメージが一気に具体化しました。さらに、開発者が日頃利用しているコードツールやチケット管理ツールと連携しながら学べたことも、得られた気づきを現場で試しやすいと感じました。

学び

ワークショップを通じて、私たちは特に以下の 3 点を持ち帰りました。

① AI を組込み「速さ」と「再現性」を両立する秘訣は、プロセスと意思決定の透明化

ハンズオンを通じて、チケット管理ツールと連携した AI 駆動開発の体験では、チームとして AI を使いこなすことで、AI 開発の「再現性」がコード生成の速さ以上に恩恵をもたらしてくれると思いました。

直面している課題、「チームにおける AI を活用した開発手法の確立」に対して、設計の意図や AI とのやり取りを記録として残し、誰がどのように判断したのかをプロジェクト管理ツールと連携させながら運用していく SDLC は、これまでに発想がなかったアプローチだったため、非常に勉強になりました。身をもってそのプロセスを実践することができたため、一人のスキルに依存しないチームでの開発プロセスを具体的にイメージすることができました。

② AI が真価を発揮するのは新規開発だけでない、リバースエンジニアリングで「生きた設計書」を実現する

長年更新されていない設計書や、複雑化した既存コードの解読は、多くの開発現場を悩ませる課題です。今回のハンズオンでは、現状のソースコードを AI に読み解かせ、ドキュメントとして再構築するリバースエンジニアリングの威力を目の当たりにしました。この使い方は、保守運用段階や途中参画のプロジェクトにおいて、チーム全体のシステム理解を飛躍的に高めます。常にシステムの全体像と整合性を把握できる状態を保つことができ、属人化を防ぎつつ保守運用を効率化する有効性は、新たな発見でした。

③ ツールが進化しても変わらないもの、顧客の「信頼」を守るのはリスクと向き合う人間の姿勢

TOPPAN 内には、生成 AI を高度に活用して開発を進めるチームがいる一方で、活用の適用範囲や進め方を検討しているメンバーもおり、状況はさまざまです。プロジェクトの特性上、より堅牢なセキュリティ環境が求められ「このデータを AI に渡してよいか」という判断の迷いに直面することもしばしばです。こうした、セキュリティやガバナンス基準を整備し適切に管理された環境をつくることは、早急に対応すべきであることを実感しました。

どれほど AI が手軽で優秀になろうとも、最終的なデータの取り扱いやリスクを「判断」するのは人間にしかできない役割です。個人利用の枠を脱し、組織として AI を定着させるには、この「顧客の信頼を守る」という揺るぎない基準をチーム全体で確立し、運用する仕組みが最大の鍵となります。

これからの展望

今回得た手応えを踏まえ、社内の開発プロセスへ段階的に取り込んでいく予定です。これまで AI 駆動開発に馴染みのないメンバーは、まず AI エージェントを活用した業務プロセスを取り入れるところから着手します。そのうえで、個人の AI 活用から組織への仕組みへと発展させていきたいです。並行して、AI を活用した開発を実行していく人間のリテラシーが最も重要だと感じているため、教育にも力を入れていきたいです。

今回学んだ開発手法は、あくまで “AI エージェントによる開発手法の一例” と捉えています。そのため、弊社の中でも各開発現場ごとに合ったやり方を工夫していくことが必要と感じました。メンバーの成熟度などに応じて、どこまで厳格にルールを整備するかは試行錯誤する必要がありそうです。例えば、開発チームに新人メンバーがいる場合は、skills などで厳密なワークフローを提示することも検討しています。

AI エージェントによる開発は、開発速度、正確性の向上が期待できます。その効果をチームとして高めていくために、一人の開発者に閉じずに、コンテキストが共有できる、「チームにおける AI を活用した開発プロセス」を実際の案件にも適用していくことが中期的な目標です。

(寄稿ここまで)

本ワークショップに興味を持たれた方は、Accelerating Smart Product SDLC with AI Agent Workshop をご覧ください。ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の主要フェーズを AI と協調しながら回すワークショップを体験いただけます。

著者

TOPPAN 株式会社

加納 広太

TOPPAN 株式会社 IoT ソリューション事業部 ICT 本部・フルスタックエンジニア(フロント / バック / クラウドインフラ)
入社以来、自社ソリューションの開発・保守に従事。クラウドインフラを強みとしつつ、バックエンド/フロントエンドを含む Web アプリケーションの設計・開発を担当。直近では、生成 AI を前提とした開発フローの整備や、開発者が生成 AI を効率的に活用するための支援に取り組んでいる。

大石 尋斗

TOPPAN 株式会社 IoT ソリューション事業部 ICT 本部・ジュニアエンジニア
AWS の利用を開始して約 1 年。入社 2 年目で AWS 認定資格、SAP(AWS Certified Solutions Architect – Professional)を取得。業務では生成 AI を組み込んだアプリケーション開発に従事し、新規機能開発および改修を担当。フロント/バック/クラウドインフラまで、幅広い領域をカバーしている。

アマゾンウェブサービスジャパン 合同会社

三好 史隆

アマゾンウェブサービスジャパン 合同会社 技術統括本部 自動車・製造 ソリューション部 ソリューションアーキテクト
システム構築のためのアーキテクチャ提案や人材育成のためのワークショップ提供など、技術的な面からお客様のクラウド活用をご支援しています。